名古屋白龍 住環境を守る会
高層新築マンション建設反対運動 カルティア瑞穂ヶ丘・イワクラ ゴールデン ホーム・日本建設・瑞穂マンション反対

名古屋市立大学名誉教授
山田 明 レポート

共謀罪「先取り」裁判

2017年6月17日

 共謀罪法案が強行可決された 15 日、名古屋地方裁判所で名古屋市瑞穂区白竜町の 15 階建てマンション建設に抗議する住民代表が 逮捕された事件の第 3 回公判が開かれた。今回は「被告人」尋問である。傍聴した感想・ コメントを 5 点ほど箇条書きしたい。

 第 1 に、傍聴人の多さに驚いた。前回の 3 月 14 日の第 2 回公判に比べ、604 法廷前 の廊下に早くから長い列ができていた。共謀罪「先取り」裁判ということでメディアに 大きく報じられ、共謀罪法案成立の当日でもあり、まずは市民の関心の高さを感じた。 マスコミ関係者も傍聴し、公判前 2 分間、法廷内の撮影が行われた。

 第 2 に、被告の奥田恭正さんの尋問が 2 時間余り続いたが、終始落ち着いた感じで、 質問にしっかりと答えていた。記憶にあることと、ないことを区別して証言していたと 思う。前回は原告側の現場監督らの証人尋問だったが、証言に曖昧なところが多かった。 最後のほうで弁護士から追及され、事件当日の夜、「代行運転」を頼んでお酒を飲んで 帰宅したことが明らかになる。

 第 3 に、閑静な住宅街の住環境を守る活動、その代表として建設現場に毎日のように 出向く奥田さんの姿、人柄が明らかにされた。現場監督に対して悪 く思ったことはないが、不誠実な対応を続けるイワクラゴールデン ホームには腹が立ったという。今回の裁判を考えるうえで、「事件」 をめぐる問題の背景、原告と被告の関係は重要だと感じた。

 第4に、事件の具体的状況が防犯カメラの映像をコマ送りして確認された。集中して 見たが、どう考えても被告が「暴行」する様子は確認できなかった。前回の原告証人の 証言との食い違いが明確になった。防犯カメラの映像鑑定が決まり、その結果が、次回 公判に報告される。当日、何台かのパトカーがただちに出動して、奥田さんをすぐ逮捕 したことは、それまでの警察の動きとの連続性を疑わせた。

 これが最も印象に残ったが、第5に「供述調書」について。調書には奥田さんの今回 の証言、映像などと異なることが書かれている。なぜなのか。奥田さんも、そんなふう に供述した覚えはないと言う。ここに逮捕から 14 日におよぶ拘留の影響が考えられる。 家族や仕事、そして抗議活動の仲間のことが気になり、気持ちが動揺してきたという。 そんな時に作成された調書である。この調書の矛盾を具体的にどう明らかにしていくか が、裁判の焦点であり大きな課題であると思った。

 逮捕から拘留、そして「供述調書」作成のプロセスは、共謀罪法案の審議でも問題に なった。共謀罪はこうした高層マンション建設に抗議する住民運動を萎縮させるだけで なく、奥田さんのような不当な事件が危惧される。そのいみからも、共謀罪「先取り」 裁判として今後も注視していきたい。