名古屋白龍 住環境を守る会
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名古屋市立大学名誉教授
山田 明 レポート

白龍の住民運動と私

2018年3月3日

 「名古屋・白龍住環境を守る会」代表の奥田恭正さんが不当逮捕され、1 年数ヶ月にわたる裁判の末、無罪判決が確定した。白龍の住民運動が新たな段階を迎えるにあたり、私がこの運動に関わった経過などを書きとめておきたい。

 いまから3 年ほど前、瑞穂区の「ウェルネスはやし鍼灸院」に通いはじめた。名古屋市立大滝子キャンパスから「郡道」を歩くこともあり、鍼灸院近くに広い空き地があるのが気になっていた。ここはブラザーの寮があり、その跡地に15 階建てのマンションが建設されることになる。住民運動の先頭に立った奥田さんが不当にも逮捕された。

 2016 年10 月、名古屋栄で開催された景観と住環境を考える全国ネットワーク(景住ネット)全国集会に参加した。白龍と全国各地のマンション問題の報告を聞くためだ。不当逮捕された奥田さんのことも気になっていた。ここで保釈されたばかりの奥田さんにお会いでき、すこし話ができた。奥田さんの裁判の地元住民「説明会」が、その年の暮れにあった。会場を間違えてしまい、遅れて参加した。弁護団による説明から、奥田さん無罪を確信した。思わず手を挙げて発言した。マスコミへの働きかけ、そのためにホームページなどによる情報発信が必要などと発言した。この発言により、白龍の住民運動と直接関わることになった。

 まずマスコミへの働きかけとして、年末に朝日新聞の伊藤智章・編集委員にレポートなどを同封して手紙を送った。伊藤さんは環境問題などを幅広く手がけ、健筆を振るう信頼できる記者だ。昔からよく知っていたので、取材などお願いした。伊藤さんの筆はさすがであり、白龍の問題を広く知らせるうえで大きな力になった。

 白龍について、マンション問題の前から「郡道」絡みのレポートを何本も書いていた。それを持って、鍼灸院に行く前に奥田さんの薬局に立ち寄り、裁判のことなどを聞いた。奥田さんの苦悩と人柄を知る機会になった。情報発信については、渡邉正之さんと八幡一義さんらに相談した。渡邉さんは映像、八幡さんはIoT のプロであり、専門家として頼りになる存在だ。ホームページの準備は進んでいたが、多忙なお二人であり、実現には時間がかかった。インターネットを使わない住民も多いようなので、手っ取り早く情報を発信できる「かわら版」の発行を提案した。

 確か、連休明けに「かわら版」が欲しいと題した原稿を書いた。これが「かわら版」0 号として発行された。「かわら版」は渡邉さんの編集により3 号まで発行された。近所の酒屋さん、鍼灸院のスタッフや患者さんらも愛読してくれた。ホームページもだんだんと充実していき、私の「レポート集」コーナーも設けられ、レポートが掲載されるようになった。最近までに、ホームページの「来訪者」は2 万6 千人を超えている。とくに3 月13 日の無罪判決の前後から、「来訪者」が急増していった。

 鍼灸院に行く時、地下鉄「妙音通駅」から歩いて、マンション現場を一周するよう心がけた。現場を訪ねることにより、住民の皆さんと怒りを「共有」し、建設現場周辺の「空気」を知りたかった。それを写真に撮って、レポートを書き続けてきた。

 奥田さんのご自宅周りにも足を運んだ。2階のベランダには大きな垂れ幕、道路沿いの壁一面に掲示が貼られている。「住民は苦しんでいる」と。この壁新聞は地域の人らに読まれているそうだ。私のレポートも大きく拡大されて掲示されている。なんだか嬉しくなる。薬局の仕事の合間に、掲示を貼り替える奥田さんの姿も見かけた。

 奥田さん裁判の傍聴に、昨年3 月の第2 回公判から出かけた。傍聴の抽選を待つとき、地元住民や支援の人たちとも顔なじみになっていった。くじ運が悪い私は、地域の人に何回か傍聴券を譲ってもらった。なるべく傍聴席の最前列に陣取り、奥田さんや弁護団に目をやりながら、熱心にメモを取った。それをもとに、翌日には「傍聴記」を書いた。

 こうして、あの記念すべき判決の日に、法廷内外で感動を味わうことができた。昨年末に大阪に転居して、これまでのような「定点観測」はできないが、白龍の住民運動を大阪の地から見つめていきたい。白龍から、これからも学ぶことが多い。